2024年06月23日 公開
2025年03月23日 更新

遺言書作成の種類は大きく分けて4パターン!
その特徴とおすすめは?
「遺言書を作成する」となったとき、どのように作成するイメージを抱きますか?
遺言書は、その作成方法や保管方法によって、大きく4種類に分けられます。
それぞれにメリット・デメリットがあり、あなたに合わせた選び方ができます。
01-自筆証書遺言(自宅保管) ~特徴は「その場で費用をかけず作成できる」~
遺言の内容を自筆で記入し、封をして、自宅などで保管をする遺言形式です。
保管については、ご本人はもちろん、
封を開けなければ、他の信頼できる方などに預けるかたちでもOKです。
【メリット】
◎ 日にちを要せず、自分ひとりで作成できる
「遺言書を書こう」と思い立ったそのときに、誰の立ち合いも必要なく作成することができます。
◎ 費用がかからない
紙とペン、印鑑があれば作成可能です。
【デメリット】
⊖ 紛失、未発見、偽造、破棄などの危険がある
亡くなった後に、遺言書を見つけてもらえなかったり、
内容に納得のいかない相続人が破棄してしまったりなどの危険性も否定できません。
⊖ 本文はすべて自筆しなければならない
パソコン等での作成はできません。(一部を除く)
⊖ 記載方法に必要な要件が欠けている場合、無効となる可能性がある
有効な自筆証書遺言にするためには、形式の面での要件があります。
(例:日付・氏名を記載しなければならない など)
この要件が欠けていた場合、効力のある遺言書と認められず、その後の相続手続きに支障を来たすおそれもあります。
正しい形式の遺言書にするためには、この要件を頭に入れながら作成しなければなりません。
⊖ のこされたご家族等(受遺者・相続人)に検認手続きの負担が発生する
「検認」とは、家庭裁判所が、遺言書の確認や証拠保全をする手続きのことです。
家庭裁判所が決めた検認期日には、相続人全員が参加します。(申立人以外の相続人は、欠席することも可能ではあります)
自筆証書遺言(自宅保管)の場合、この検認が必須です。
亡くなった後、遺言書の保管者や発見した相続人は、開封前の遺言書を家庭裁判所に提出しなければなりません。
なお、検認前に遺言書を開封してしまった場合、開封した方に5万円以下の過料が課せられるリスクもあります。
費用をかけずに作成できるのが、自筆証書遺言(自宅保管)の最大のメリットです。
ただし「検認」が必要となるため、のこされたご家族にその費用や手間がかかります。

行政書士事務所
当事務所にて自筆証書遺言(自宅保管)の作成をご依頼いただける場合、
・遺言書の文案作成
・「形式面の要件を満たす+内容面で矛盾のない」遺言書作成のサポート
をさせていただきます。
02-公正証書遺言 ~特徴は「安心感」~
公証人と、証人2名以上の立ち合いのもとで作成し、遺言書の原本は公証役場で保管される遺言形式です。
「公証人」とは、特定の事実や法律関係(契約など)の存否について、証明をする公務員です。
元裁判官や検察官など、法律のプロとなる方が任命されています。
この公証人によって作成される書類は「公正証書」と呼ばれ、極めて強力な証拠力を有します。
公正証書遺言は、遺言者本人と公証人に加え、証人2名(3名以上も可)の計4名で
遺言内容の真正性や遺言者の意思能力を確認し、署名押印をして作成します。
証人2名は、親族でない者・未成年でない者などの要件をクリアすれば、知人などにお願いすることも可能です。
【メリット】
◎ 紛失・偽造・破棄などのおそれがない
遺言書の原本は公証役場に保管されます。
原本の写しである謄本と正本は遺言者本人に渡されますが、万が一紛失等してしまった場合でも、
謄本の再発行が可能です。
(再発行が可能ではありますが、紛失等しないよう大切に保管してください…)
◎ 極めて強力な証拠力をもった遺言書を作成できる
公証人による認証がされた遺言は有効と認められ、ほぼ無効となることはないといってもよいほどの真正性があるため、
希望どおりの遺贈・相続が期待できます。
◎ 公証人が内容の確認をしてくれる
法律のプロである公証人によって、内容に矛盾がないか・法的に問題はないか・遺言者本人の意思に基づいたものであるか
などの確認がされるため、安心して作成ができます。
◎ 検認手続きが不要
自筆証書遺言(自宅保管)の場合に必要な「検認🔗」の手続きが、公正証書遺言では不要です。
のこされたご家族にとっては、実質的・精神的・金銭的負担が最も軽減される遺言形式です。
◎ 自筆の必要がない
公正証書遺言は、パソコン等での作成が可能です。
自筆の負担がないため、伝えたいことがあれば十分な内容を記載することができます。
なお、行政書士などへ依頼をすれば、本文作成作業の必要もなくなるのでおすすめです。
◎ 遺言書に記載の人物の氏名・住所が変更となった場合でも、変更の届出が不要
後述の自筆証書遺言(法務局保管)の場合に必要となる届出です🔗。
公正証書遺言では、この届出は不要です。
遺言者が亡くなり、いざ相続(遺贈)となったときに、
変更の経緯を証明できるもの(住民票や戸籍謄本など)があれば、問題ないとされています。
【デメリット】
⊖ 作成完了までに日にちがかかる
公証人を含めた認証立ち合い日時の調整や、公証人による内容チェックなどが必要となるため、
遺言書を完成させるまでに少々お日にちがかかります。
⊖ 他の遺言形式に比べて費用がかかる
メリットの多い遺言形式であるがゆえに、他の遺言形式に比べると費用がかかってしまいます。
⊖ 認証立ち合い日時を決め、公証役場に出向かなければならない
認証立ち合いの場所は、原則公証役場となります。
ただし、病気等で外出が難しい場合、公証人に出張してもらうことも可能です。(公証人の日当・交通費がかかります)
安心して遺言できることが、公正証書遺言の最大のメリットです。

行政書士事務所
当事務所にて公正証書遺言作成をご依頼いただける場合、
・遺言書の文案作成
・公証役場とのやり取り
・証人としての立ち合いなどのサポート
をさせていただきます。
03-自筆証書遺言(法務局保管) ~新しい自筆証書遺言のかたち~
2020(令和2)年7月より施行された「遺言書保管制度」による遺言形式で、比較的最近に始まった制度です。
公証役場で保管される「公正証書遺言」以外の遺言書について、これまでは自宅などで保管するしかありませんでしたが、この制度により、法務局に預けるという選択肢が増えました。
【メリット】
◎ 紛失・偽造・破棄などのおそれがない
遺言書は、法務局の遺言書保管所に保管されます。
◎ 作成から保管手続きまで、自分ひとりだけで完遂できる
「遺言書の内容を知られたくない」といった場合でも、証人等を必要とせず作成が可能です。
※法務局の職員(遺言書保管官)の目に触れるタイミングはあります
◎ 法務局による形式面でのチェックが受けられる
先述の「01-自筆証書遺言(自宅保管)」にてお話ししたとおり、自筆証書遺言には形式の面での要件があります🔗。
法務局保管の自筆証書遺言の場合、手続き時に法務局によって形式面のチェックをしてくれるので、
形式不備による無効のおそれがありません。
◎ 検認手続きが不要
公正証書遺言と同様、検認🔗手続きが不要です。
◎ 遺言者が亡くなった際、遺言者の指定する人に通知を送ることができる
遺言者の希望があれば、遺言者が亡くなった後、
法務局から特定の人に対し、法務局にて遺言書が保管されていることを知らせる通知が送られます。
【デメリット】
⊖ 本文はすべて自筆しなければならない
自筆証書遺言(自宅保管)と同様、パソコン等での作成はできません。(一部を除く)
⊖ 法務局での内容の確認まではしてくれない
法務局では、形式面でのチェックはしてくれますが、
公正証書遺言において公証人が行なってくれるような内容の確認まではしてくれません。
⊖ 遺言書の保管手続きの際、法務局まで出向かなければならない
公正証書遺言における、公証人による出張対応のようなサービスはありません。
⊖ のこされたご家族等(受遺者・相続人)は、遺言書の内容確認の手続きが必要
遺言者が亡くなった後、ご家族等(受遺者・相続人)は法務局に対して手続きを行います。
その際、申請書類の作成や法務局への提出の必要があります。
⊖ 関係者の氏名・住所が変わった場合にも、手続きが必要
遺言者本人をはじめ、手続き時に遺言者が指定した受遺者・遺言執行者・通知を受ける方 の氏名や住所が変わった場合、
その都度法務局に対し、変更の届出をしなければなりません。
そのため、遺言書の関係者の現在の氏名・住所を常に把握していなければならない負担があります。
この制度ができたことにより、手続き面・費用面において、
「01-自筆証書遺言(自宅保管)」や「02-公正証書遺言」とはまた異なる選択肢が増えました。

行政書士事務所
当事務所にて自筆証書遺言(法務局保管)の作成をご依頼いただける場合、
・遺言書の文案作成
・形式面の要件を満たす+内容面で矛盾のない遺言書作成のサポート
・法務局での手続きのレクチャー
をさせていただきます。
04-秘密証書遺言 ~おすすめする方が限られる遺言形式~
秘密証書遺言は、今ではあまり利用されることのない遺言形式ですので、参考までにご紹介します。
事前に自分で作成しておいた遺言書を持参し、その遺言書が自分のものである旨を、
公証人と、証人2名以上の立ち合いのもとで申し出て証明する遺言形式です。
公証役場には遺言したという事実が記録されるだけで、遺言の内容までは記録されません。
また、公証役場では遺言書の保管もされないため、自宅などで保管することになります。
【こんな方におすすめ】
◎ 自分が亡くなるまで、遺言の内容を誰にも見られたくない場合
公証人や証人も、その遺言書が遺言者本人のものであるという事実を確認するだけで、内容の確認はしません。
◎ 病気等で自筆が難しく、自筆証書遺言の作成ができない場合
秘密証書遺言は、遺言書作成において自筆である必要はありません。
◎ 毎年遺言書を作成し直すなど、頻繁に撤回する予定がある場合
秘密証書遺言は、公正証書遺言に比べ、作成費用を抑えることができます。
上記3ケースのすべてに当てはまる場合、秘密証書遺言を検討してもよいかもしれません。
【デメリット】
⊖ 紛失、未発見などの危険がある
自宅での保管となった場合、そのような危険性もあります。
⊖ 認証立ち合い日時を決め、公証役場に出向かなければならない
公正証書遺言の場合と同じです。
⊖ 記載方法に必要な要件が欠けている場合、無効となる可能性がある
公証人や法務局等による確認が及ばないため、自筆証書遺言(自宅保管)と同様のデメリットが発生します🔗。
⊖ のこされたご家族等(受遺者・相続人)に検認手続きの負担が発生する
秘密証書遺言も、検認🔗が必要となります。
先述した【こんな方におすすめ】に記載の3点についても、他の遺言形式でカバーできるため、
特におすすめする機会がない…というのが正直なところです。
05-4種類の遺言形式のまとめ
以下の表に特徴をまとめましたので、参考にしてみてください。
淡い赤の部分は、各項目について最もおすすめとなる点です。
※メリット・デメリットについては、先述の01~04をご確認ください
※下記記載の費用に加えて、郵送費・交通費などがかかる場合があります
あくまで参考程度にご確認ください
01-自筆証書遺言 (自宅保管) |
02-公正証書遺言 | 03-自筆証書遺言 (法務局保管) |
04-秘密証書遺言 | |
保管方法 | 自宅などで保管 | 「原本」は公証役場に保管、 「正本」「謄本」は 遺言者に交付 |
法務局(遺言書保管所) |
自宅などで保管 |
遺言者本人に かかる費用 |
0円 | 16,500円~ 相続・遺贈する人数と金額 によって計算される |
3,900円 (法務局への手数料) |
一律11,000円 |
相続人・受遺者等 |
950円 (検認にかかる費用) |
0円 | 1,400円 (法務局への手数料) |
950円 (検認にかかる費用) |
検認の有無 | 必要 | 不要 | 不要 | 必要 |

行政書士事務所
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ご相談いただきながら、あなたに合った遺言書の作成をサポートいたします。
どうぞお気軽にご相談ください。